MENTAL
「メンタルが強い・弱い」は、
存在しない。
知っておきたい、メンタル5つの真実
「うちの子は、メンタルが弱くて…」
「あの選手は、メンタルが強いなあ」
サッカーの現場で、毎日のように交わされる言葉です。でも——その"メンタル"についての理解、実は多くが思い込みかもしれません。
この記事では、指導者・保護者が抱きがちな「メンタルの誤解」を5つ、順に解いていきます。この誤解がほどけると、選手への声かけが、根本から変わります。
誤解①「メンタルが強い人・弱い人がいる」
同じ選手でも、状態が良いときと悪いときで、プレーは大きく変わります。「弱い」のではなく、その時々で実力を発揮できる状態か、そうでないか——それだけなんです。
そもそも「メンタル」とは何か。分解すると、こうなります。
土台にあるのがマインド(信念・価値観・自己像・物事の捉え方)。そこに、感情・思考・意識が加わったもの——これが「メンタル」の正体です。
そしてこれらは全て、生まれつきの性格ではなく、
生まれてから様々な経験をする中で身に付いた "能力" です。
後天的に身に付いた能力ということは——いくらでも変えられるし、新たに身につけたり、更新できるということ。「弱い性格だから」と、あきらめる必要は、どこにもありません。
誤解②「キツい練習で、メンタルは強くなる」
厳しい練習を乗り越える経験は、確かに一つの糧になります。でも、それで身につくのは「キツい状況への耐性」であって、メンタルのほんの一部にすぎません。
試合の大事な場面で力を出す、ミスを引きずらない、仲間と良い関係を築く——こうしたメンタルの多くは、走り込みだけでは育ちません。"鍛える"のではなく、"今の自分の状態に気づき、適切な状態へコントロールする"ことが必要なんです。
誤解③「ポジティブな言葉で、ポジティブになる」
これは、とても根深い誤解です。心の中はずっと不安なのに、言葉だけ「大丈夫!」と言っても——人間は、言葉より"心の中"を優先します。
ここで鍵になるのが、私がコーチングの師匠・平本あきお氏から学んだ「コングルエントの輪」という現実化のモデルです。
「考えていること」「言っていること」「やっていること」「感じていること」——この4つが重なりあう部分が、”現実”になる。逆に言えば、1つでも一致していないと、望む現実にはなりにくい、という考え方です。
言葉だけポジティブで、心の中が不安なままだと、
4つがバラバラになります。
すると、置き去りにされたネガティブな感情は
「もっと気づいて」と、かえって大きくなることさえあるのです。
サッカーの場面で考えると、分かりやすいかもしれません。たとえば、PKを蹴る選手。
言っていること
「大丈夫、俺なら決められる!」
感じていること
無意識に「自分は、このPKを決めるのに相応しくなさそう」と感じている。言語化すれば、相応しくないと感じて、不安でドキドキしている。
やっていること
視線は下がり、GKの圧にたじろぐ。いつもと違うルーティンを始め、助走も短い。冷や汗が出てくる。
考えていること
外すイメージが湧いてくる。「決められるだろうか」と疑念が浮かび、途端に不安が襲う。「このGK大きいな、ゴールが狭く感じる、隙が見当たらないな」。
言葉は前向きでも、残りの3つがバラバラ。これでは、”決める”という現実は、なかなか起こりません。だからこそ、言葉だけでなく、4つすべてを揃えにいくことが大切なんです。
大切なのは、言葉を飾ることではなく、心の状態そのものを、適切な状態へコントロール(チューニング)すること。順番を、間違えないことです。
誤解④「掛け声で、選手の状態は変わる」
現場でよく飛ぶ言葉があります。「集中していこう!」「自信持って!」「気持ち強く!」「落ち着け!」「リラックス!」「楽しめ!」
どれも愛のある言葉です。でも——その場で突然言われて、集中も、リラックスも、できる選手はほとんどいません。
なぜか。それは、多くの選手が(そしてチームが)、こう問われたときに答えられないからです。
「どうすれば、集中できる?」
「どうすれば、リラックスできる?」
「どうすれば、自信を持てる?」
その状態に"どうすればなれるか"が、具体的に定義され、共有され、トレーニングされて(=再現できるように)いないから。だから掛け声は、届かない。メンタルは「鍛える」より、「今ここの自分を観察し、心の状態に気づいて、より適切な状態へチューニングする」。ここでも、それが答えです。
誤解が解けると、関わりが変わる
5つの誤解を見てきました。共通しているのは——メンタルは、生まれつきの性質ではなく、整え方を学べる”能力”だということです。
「強くしよう」「気合を入れよう」ではなく、「今、どんな状態か」を観察し、「どうすれば、より適切な状態へコントロールできるか」を一緒に探す。この視点に立つだけで、選手へのまなざしと声かけは、大きく変わります。
そして、その"コントロールの方法"には、ちゃんと具体的なやり方があります。私たちがサポートしているのは、まさにそこ——選手が、自分で心の状態を観察し、適切な状態へチューニングできるようになる、その手伝いです。
INNER STANDARD
「心のコントロール」を、選手と一緒に
メンタルは、生まれつきではなく、身につく力。
その第一歩を、2つの入口からどうぞ。
サッカー専門メンタルコーチ 瀧澤 博志
INNER STANDARD / Football Mental LABO
