TEAM BUILDING
なぜ、チーム内に
“温度差”が生まれるのか
根性論では埋まらない、
チームデザインの話
チームをまとめる立場にいると、こんな悩みに、一度はぶつかるのではないでしょうか。
✓トップチームとセカンド、レギュラー常連組と控え組などで、「やる気」に明らかな差がある
✓下のカテゴリーからの“突き上げ”が弱く、競争原理によるレベルアップが働かない
✓チーム全体が一枚岩になりきらない(トップだけが団結している)
✓一体感を出したいが、何をすればいいか具体的に分からない
✓チーム運営が、どこか“ほわっと”した感覚のまま進んでいる
✓レギュラー常連組の意見ばかりが通り、他の選手や下カテゴリーの声が吸い上げられない
✓頑張る選手を評価したいのに、結果を出すレギュラーばかりを褒めてしまう
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どれか一つでも当てはまったなら、この記事はきっと役に立ちます。これは「気合が足りない」という話では、まったくないからです。
多くのチームで、”心理”までは手が回らない
はじめに、正直な現実から。サッカーの指導者は、本当に多くのタスクを抱えています。技術指導、戦術、コンディション管理、保護者対応、運営、そして多くのチームは潤沢な予算があるわけでもありません。特に育成年代では、スポンサーがつくチームは稀です。
だからどうしても、指導者一人が学び、チームに還元しようとする。でも、そこには限界があります。そして——人の心理まで踏まえて、チームの”構造”そのものを設計している指導者は、実はまだ多くありません。
それは指導者の能力の問題ではなく、そこまで手が回らない、という構造的な事情です。でも、だからこそ——ここに気づいて設計できるチームは、大きく抜け出します。
“温度差”の正体は、根性ではない
「あの子はやる気がない」で片づけてしまうと、何も変わりません。温度差には、もっと構造的な原因が、主に3つあります。
① モチベーション(自分軸)の差
ここで気をつけたいのが、スポーツは”表面的な目標”を立てやすいということです。大会がある、レギュラーの枠がある——だから「優勝する」「レギュラーになる」という目標は、簡単に立ちます。
それ自体は悪くありません。でも、その目標の奥に、“自分は何のためにサッカーをするのか”という自分軸があるかないかで、同じ目標でも、湧き出るモチベーションの質はまったく変わります。そしてその差が、日々の意識や行動に、じわじわと表れます。
② セルフイメージの固定化
人は、無意識のうちに「自分はこういう存在だ」というセルフイメージを持ち、そのイメージ通りの自分になろうとします。
トップにいる選手は「自分はここに相応しい」と感じ、その振る舞いをする。一方、セカンドにいる時間が長い選手は、いつしか「自分はこのくらい」というイメージを無意識に作り、それが日々のプレーや振る舞いに表れてしまう。居る時間が長いほど、この固定化は強まります。
③ 指導者自身の”色眼鏡”(無意識)
そして、いちばん見落とされがちなのがこれです。選手を評価し、起用を判断するのは、指導者が果たすべき大切な役割です。ですが、そこに——無意識のバイアスがかかります。
「この選手は、このくらいが相応しい」
そう思い込んだ瞬間、指導者はその色眼鏡で選手を見はじめます。
関わり方、観察の濃さ、フィードバックの質——すべてが、無意識に変わる。
これは、ガイドブック第1章でお伝えした「ピグマリオン効果」の、逆回転です。「この子は伸びる」と信じるまなざしが選手を伸ばすのと同じ仕組みで、”この子はこの程度”という無意識の思い込みが、選手をそこに固定してしまう。固定メンバーが多いチームほど、これは強く働きます。仕方のない面もありますが、気づいているのと、無自覚なままとでは、その後の設計がまるで変わります。
だから、”起こらない仕組み”を設計する
ここが、この記事のいちばん大切なところです。今の3つは、放っておけば自然に”起こってしまう”ものです。人間の心理として、避けられない。
温度差は、根性や声かけで埋めるものではありません。
“そうならない仕組み”を、あらかじめ設計するものです。
では、何をどう設計するのか。その土台となる、とても有名な考え方があります。
成功の循環モデル ― どこから手をつけるか
組織論で知られる、ダニエル・キム氏の「成功の循環モデル」です。良い結果は、次の4つが循環して生まれる、という考え方です。
多くのチームは、いきなり「結果の質」を求めます。「勝て」「走れ」と。でも、そこから入ると循環は回りません。焦り、ギスギスし、かえって結果が出なくなる(これを”バッドサイクル”と言います)。
回り出すチームは、「関係性の質」から始めます。信頼と安心の土台をつくる。すると、選手が安心して考えられるようになり(思考の質)、主体的に動き(行動の質)、結果がついてくる(結果の質)。そしてその成功が、さらに関係性を深める。
そして、この「関係性の質」の土台になるのが、”心理的安全性”——何を言っても、失敗しても、否定されないという安心感です。温度差をなくす設計は、すべてここから始まります。
具体的に、何を設計するか
「関係性の質」を土台に、温度差を生まない仕組みを、具体的に挙げます。
◆ 一人ひとりの”自分軸”を明確にする
所属カテゴリーに関係なく、全選手の自分軸・目的・目標を、一緒に言語化し、見える化する。前述の通り、表面的な目標の”奥”にある動機を掘ること。ここはマストです。
◆ カテゴリーの壁を、できるだけなくす
人の移動が頻繁に起こる仕組みにする。「一度セカンドに行ったら固定」ではなく、行き来が当たり前の環境が、セルフイメージの固定化を防ぎます。
◆ 到達基準を、階段状に明確にする
各カテゴリーの基準、そのなかでの段階を、曖昧にしない。そのためには、チームがどんなサッカーを目指すのか(ゲームモデル)を、あらかじめ明確にしておく必要があります。基準が見えれば、選手は自分で登れます。
◆ クレド・価値観を、前提として共有する
チームのあり方、大切にする価値観、ルールを、全員の前提にする。そして指導者は、カテゴリーに関係なく、”どの選手も見ている”ことを、選手自身に伝え続ける。心理的安全性を、必ず確保する。
そして、いちばん大切な価値観のひとつ。
「下からの突き上げこそ、チームを強くする」——
これを、全員に浸透させること。
日本一を目指すなら、”チーム内のメンバー争いが、日本一レベル”であるべき。
他チームとの対戦より、自チームの紅白戦のほうが強度が高い。
その状態こそが、目標にふさわしいのだ、と。
チームの成熟度で、関わり方を変える
もう一つ、大切な視点。リーダーシップは、チームの成熟度によって変えるものだということです。
チーム初期
牽引するリーダー
価値観もベースもこれから。リーダーが前に立って引っ張り、知識やあり方をレクチャーして、土台を作っていく段階。
チーム成熟期
ファシリテーターとしてのリーダー
価値観が浸透し、選手も成熟した段階。リーダーは引っ張るより、選手の主体的な考えや行動を引き出し、まとめる役へ。
同じ指導者でも、チームの段階に応じて”引っ張る”と”引き出す”を使い分ける。
これは、サッカーそのものと同じです。相手チームや選手の特徴、戦術や狙いに応じて、自チームのシステム・戦術・ポジショニングといった”やり方”を微細に調整しますよね。リーダーがチームの状態に応じてリーダーシップの発揮の仕方を変えることは、その戦術調整と、まったく同じです。これも、温度差を生まないチームデザインの一部なのです。
温度差は、”設計”で変えられる
温度差は、選手のやる気の問題ではありません。それが生まれてしまう構造を理解し、生まれない仕組みを設計する——そこにこそ、指導者の腕の見せどころがあります。
対人間だからこそ、人の心理まで考えたチームデザインができる。それが、これからのチームの、そして選手一人ひとりの可能性を、大きく広げていきます。
INNER STANDARD
心理を踏まえたチームデザインを、
一緒に
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サッカー専門メンタルコーチ 瀧澤 博志
INNER STANDARD / Football Mental LABO
